JAXAの小型月着陸実証機『SLIM』、世界5カ国目にして高精度な月面着陸成功

Science

P.S.
扉画像と本題とは、全く関係がありません(笑)

小惑星探査機『はやぶさ2』の、精度60cmのタッチダウンも胸熱案件なオタクっぷりで快挙でしたが、再び今度は正真正銘の着陸、それも大気がほぼ無く重力も弱い月面着陸という難関に、精度100mというオタクっぷりで挑んだ小型月着陸実証機『SLIM』、見事に月面着陸が成功した模様ですね。

無人探査機の月面着陸は、世界で5カ国目となる快挙。

小型月着陸実証機 SLIM | ISAS/JAXA
Moon Sniper SLIM Project

リアルタイムでライブ配信を観ていたのですが、SLIM本体から届く各種情報が、ほぼリアルタイムで確認が出来る状況でのライブ配信で、そのテレメトリーされている結果が体験出来るのは、単純に楽しいですし、ワクワクしますよね。
12基の補助エンジンやメインエンジンの噴射量、XYZ値の傾き、速度、高度、燃料値等々、ある意味でシミュレーション・ゲームでもやっているのか、と思うほど1画面にまとめられた情報量とリアルタイム性。

月面高度15kmからテレメトリーのリアルタイム配信が開始、高度3.5kmを切った時点でテレメトリーの画面モードも切り替わり、垂直降下フェーズに突入。
途中、高度50mという、もう真下が月面の地面という場面でホバリング、SLIMの真骨頂でありキモになる、月面の画像照合で障害物を検知、自動で着陸地点の微調整が入り、更に降下。
残り数m(3m程度?)で、一瞬ホバリングしたと思ったら高度ゼロに。

おおお?
やったか?

テレメトリー上、月面高度ゼロ。

どうだどうだ?

3分が過ぎ、5分が過ぎ。。。
なかなか成否のコメントが出てこない。

そして10分ほど経過。
うーん、、、月面からだとSLIMの電波自体は1,2秒あれば届くはずなので、予定どおりの〝成功〟であれば、早くにコメントも出せるはずだと思っていたのですけど、なかなか正式コメントが出てこない。

そうこうしているうとに、「現状確認中」という事で一旦、ライブ配信を中断して待機画面に変わってしまった。

ありゃー、もしかして失敗か?

共同通信経由のニュースで、「SLIMからの電波は問題なく受信出来ている」という記事が出て来て、あれ、どーなってるんだ、と。
ライブ配信の待機画面中も、ときおり音声だけで何か会話らしき声が聞こえてて、なにやら対応している模様。

そんなこんなで、もう寝ようかと思っていたら、2時10分より記者会見という告知に切り替わった。
寝れない(笑)

2時10分より少し遅れて記者会見が始まった。
壇上に上がる、御三方。
JAXA理事長の山川宏氏。
宇宙科学研究所長の國中均氏。
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所副所長の藤本正樹氏。

3人の顔が、、、凄く暗い。。。(笑)

喋る前から、もう顔に出てる、って思っていたら、、、

「着陸は成功した」と。
「SLIMからの電波も正常」と。
「こちらからのコマンドも正常に受けている」と。

はい?
成功じゃないの。

もうちょっと、嬉しそうな顔をしようよ(笑)

実際、この後の質疑応答で記者から、「嬉しそうな顔をされないのは、、、」と聞かれてて、みんな思ってたんだな、と(爆)

で。
手放しで嬉しそうな顔になれなかった理由が、どうも月面着陸後に稼働するはずの太陽電池が動いてない、と。
太陽光による発電が出来ていない状況なので、SLIM本体に残されているバッテリーで動かしている、と。

そのバッテリーも、数時間で尽きてしまう、と。

なるほど。
時間との勝負になっている模様。

太陽電池による発電が稼働していない、という以外では、目立ったトラブルは発生していないようで、更に着陸までのプロセスにおいても、ほぼシミュレーションに沿う形で推移した為、かなりの精度で月面まで到達したと推測される、との事。

そして最も重要なミッション、誤差100m以内のSLIMの自律判断によるピンポイント着陸については、データの詳細な解析が必要みたいですが、着陸までのプロセスの精度を考えると、達成している可能性が大きいと予想している、と。

更に用意していた小型探査機の2機も分離に成功している模様、との事。

ほうほう。

SLIMのミッションは、大きく3つあるらしい。

ミニマムサクセス
小型軽量な探査機による月面着陸を実施すること。

フルサクセス
精度100m以内の高精度着陸が達成されること。

エクストラサクセス
日没までの一定期間、月面における活動を継続すること。

記者会見からの情報だと、少なくとも月面着陸成功なので〝ミニマムサクセス〟はクリアしている。〝フルサクセス〟はデータの分析待ちだけどクリアの可能性が大。
ただ、〝エクストラサクセス〟だけは太陽電池の稼働が条件になってしまう為、現状では厳しいか。

でも、元々「日没までの一定期間」という条件と〝エクストラ〟は余分とか追加、という意味合いなので、ミッションの重要度で言えば低いような気もする。

質疑応答で主に対応した國中所長も、太陽電池を稼働させる努力よりも、着陸までに得られた情報をダウンリンクする事を最優先にしている、と発言していたので、エクストラサクセスに拘らず、このミッションの優先順位をはっきりさせている意思が感じられたので、そこは、なるほど、と。

超小型で超軽量、その状態で必要な機器を搭載しているので、太陽光パネル等の太陽電池に関わる部分だけが故障するとは考えにくいので、太陽光パネルが何らかの理由で太陽の方向を向いていない可能性の方が大きい。
そうであれば、今後、SLIMの機体が月面での時間に耐えれるのであれば、再び太陽光パネルの向く方向から太陽光が入れば、再度起動させる可能性はあるかもしれない。

なるほどなあ。

國中所長、曰く、「60点」の出来栄えらしい。
まあ、、、世間の評価は、もうちょっと高いと思うよー(笑)

あと、本来であれば記者会見にプロジェクトマネージャーの坂井真一郎教授が、たぶん同席する予定? だったと思うのですが、太陽電池のトラブルで、現場で指揮を取るためか記者会見には同席されなかったのが、ちょっと残念かなぁ、と。
坂井教授が同席していれば、もっと面白い話が聞けたかもねえ。

それでも、國中所長の受け答えも非常にロジカルで聞いてて気持ちよかった。
 
弾丸打ち込んで、人工クレーター作り出して、砕けた物質を持ち帰る〝はやぶさ2〟に迫る快挙だよねー
はやぶさ2は〝着陸〟ではないけど、〝タッチダウン〟の精度60cmまで追い込んでるから、天体にピンポイントで狙って移動出来る技術が、確実に高まってるよね。

で、はやぶさ2の拡張プロジェクト、最終的に2031年1998 KY26という天体を目指してるみたいで、SLIMに使われた画像照合と自律移動のシステムをアップデートで組み込めるかも検討するみたいだし、なかなか面白い展開が期待出来そう。

まあ、現場の人達は手放しで喜べる状況ではないにせよ、快挙という言葉が相応しいと思うので、久々に明るいニュースな気もするよね。
これからの宇宙探索が楽しみです。

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