武田惇志 , 伊藤亜衣 『ある行旅死亡人の物語』

4.0
Book

武田惇志 , 伊藤亜衣
ある行旅死亡人の物語

(毎日新聞出版)

出版自体は2022年11月で、それ以前の連載時を考えると、新しい最近の作品でもないのですが、たまたま新聞広告で目にして気になっていたので、読んでみる事にしました。

タイトルにもなっている〝行旅死亡人〟って、最初は「旅行中に死んだ人の事?」という勝手な印象だったのですが、ちゃんとした法律用語なんですよね。
(元々は旅行中の行き倒れ等で、身元が分からない、というような事案から始まったようですが?)

普通、身元も分からないような死亡事案って、事件性もあるわけですから、警察の捜査は入るでしょうし、何かしら身元特定に繋がるアイテムや情報の1つ2つぐらいあるのでは、なんて思ったりするのですが、それでも全くの身元不明として〝行旅死亡人〟となってしまうケースは、毎年あるそうなんですよね。

実際に日本政府の機関紙『官報』に、行旅死亡人に関する情報が掲載され、情報提供が呼び掛けられています。

この本の記者が見ていた行旅死亡人に関する情報サイトは、こちらだと思います

そして、このページから物語が始まります。


読み始めて直ぐに、「何か物足りないなー」という気持ちが湧いて来た。

なんて言うんでしょうか、もうちょっと〝のめり込める〟演出というか文体というか。
事実の事柄であるにせよ、もうちよっと、こう、嘘にならない程度での〝誇張〟というか、読ませ方というか。

と、、、思いつつ読み進めていたわけですが。
結果、読み終えてみると、確かに「ぐっ」と来るような文言だったり演出的な感じだっり、自分の気持ちが突き動かされるような、そんな事は最後まで無かったのですが、これはこれで「良いのかな」という気持ちになった。

たぶんね。
〝行旅死亡人〟という聞き慣れない言葉と、身元不明というスタート。
実際の官報にも掲載されている、この行旅死亡人の情報から、〝身長約133cm〟、〝右手指全て欠損〟、〝現金34,821,350円〟という、ちょっと謎めいたキーワード。

ここから勝手に、実は凄いドラマチックな展開が、実は凄くミステリアスな、最後は大どんでん返し?、、、なんていう期待を無意識のうちにしていたのかな、と(笑)
しかし、読み終えてみると、そんな小説のようなドラマチックでミステリアスで大どんでん返しなんて起こらない。

「そりゃそうだ、そんな小説みたいな話じゃないよね」、と。

〝行旅死亡人〟だった一人の女性が、二人の記者の調査によって身元が判明し、その方の人生の一端を知る事になる、という流れを淡々と書かれている。

普通に生活している一般人が、ある日突然、〝行旅死亡人〟になってしまうかもしれない。
生きていた記録が、誰にも知られず、記憶にも残らず、〝行旅死亡人〟になってしまう。

そんな〝行旅死亡人〟の一端を、垣間見る事の出来る本なんだと思います。

最後に、そうは言っても、、、この本の主人公である〝行旅死亡人〟の全てが判明したわけではありません。
やはり、実は凄いドラマチックな展開が、実は凄くミステリアスな、最後は大どんでん返し?、があるのかもしれません。

知らんけど。

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