天才外科医BlackJack

別のBlog(Chameleon Blog)で、10月12日付でエントリーした記事なのですが、こちらにも転記しておきたいと思っていたので、基本的に同じ内容ですが転記しておきます。
>>>BlackJack.JP 「ブラック・ジャック 公式サイト」
>>>Tezuka Osamu @World
>>>ブラックジャック(YTV)
漫画家、故・手塚治虫氏の代表作の1つである「ブラックジャック」がいよいよ、民放テレビでシリーズ・アニメーション化となり、第一回目が10/11に放送された。
手塚治虫氏といえば、「鉄腕アトム」、「リボンの騎士」、「ジャングル大帝」、「マグマ大使」、「ふしぎなメルモ」等々。その代表作のほとんどは、民放によるTVシリーズのアニメーション化されていた。
しかし、なぜか「ブラックジャック」だけは、TVシリーズ化されていなかった。


過去に「ブラックジャック」が映像化になったのは、OVA等の作品やTVで観れたシリーズも、単発モノであったり実写版であったり。
私が初めて「ブラックジャック」を読んだのは、たぶん高校生ぐらいの時。友人が持っていたのを借りて読んでいた記憶があるのですが、「単に手塚マンガ」という印象以外、あまり記憶に残るものがなかった。
その後、再び、某専門学校に行くようになった頃、「ブラックジャック・豪華版」を買い始めてジックリと読む機会が訪れました。
いやぁ、、、背筋が寒くなりました。
こんな恐ろしいマンガ、初めてでした。
今にして思えば、この「ブラックジャック」が描かれていた30年ぐらい前、とても原作どおりの映像化なんて不可能だったのだと、つくづく思う。
今でさえ、果たして全てのストーリーを原作どおりに映像化できるのかさえ、とても疑問に思う。
なにより、主人公である「ブラックジャック」は、無免許の違法な医者なのだ。治療代も、法外な値段を要求してくる。
そして、その無免許で違法な医者が、免許のある正規の医者が治療できない病気を、次々と治していく。それだじゃない、ストーリー中、ブラックジッャク自身が「先生」と呼ぶ医者は数えるほどしか登場しない。ほとんどの正規の医者は、人の命より自分の地位や名誉、そして金だけを考える医者として描かれている。
こんな設定、なかなかアニメーションでは使えない。
確か実写版で加山雄三さんがブラックジッャクを演じていたTVシリーズの時も、“無免許の違法な医者”という一番重要な設定が無くなっていた。
今回のTVシリーズは、見事に原作を忠実に再現した上で、今風のアレンジがされている。
30年以上前の作品でありながら、現代医学と医療が抱える問題、、、臓器移植や安楽死、医療ミスや患者を取り巻く関係等々、全てが描かれている。
今でこそインフォームド・コンセント(医師は患者が納得するまで、あらゆる可能性について説明する必要があり、患者も知る権利と治療を選ぶ権利がある)やセカンド・オピニオン(主治医以外の病院で診察してもらい、複数の医療機関から診断してもらう権利)等、医師と患者が対等であるという考え方は少しずつ広まって来ていると思う。しかし、この作品が描かれた30年以上前は、医師という存在は神様のようで絶対的なものだったと思うんですよ。医者の言う事だけを聞いてさえいればよいという、だから医療ミスがあっても患者とその家族は泣き寝入りするしかなかった時代なんじゃないかと。
そんな時代に、この作品が子供の観るアニメーションとして映像化されていたら、少なからず問題になっていたかもしれない。
あと、今回の放送で気になったのが、ブラックジャックの助手であり、あの「アッチョンプリケ」のピノコの存在。
第一回目のストーリーから普通に登場している、ピノコ。とても有名なキャラクターなので、最初から普通に登場していてもオカシクはないのだが、原作ではピノコ誕生のストーリーも用意されている。「畸形嚢腫」という病気がテーマのストーリーだ。
正直、少し“グロイ”絵が登場する。元々、ピノコは双子の姉妹になるはずだった。子宮内で体のパーツまで成長したが、それ以上は成長できなかった。やがて双子の片方の体に取り込まれてしまう。そして、生まれて来た赤ちゃんの嚢腫になってしまっていた。ブラックジャックは、その嚢腫摘出手術を依頼される。摘出された嚢腫の中には、見事な体のパーツが揃っていた、それがピノコになるというストーリー。
ピノコ誕生のストーリーもそうだけど、何処まで原作に忠実に映像化できるか。果たして、免許のある正規の医者を、“地位と名誉。金だけの亡者”として映像化できるだろうか。監督は手塚治虫氏の息子、手塚眞氏。ぜひとも、批判を恐れず「ブラックジャック」の神髄を映像化して欲しいと思う。
この「ブラックジャック」は、時間があると、ついつい何度も読みふけってしまう。
知ってのとおり、手塚治虫氏は大阪大学の医学生だった。医者の卵だった。そんな手塚治虫氏が、なぜ“無免許で違法な医者”を主人公にしたのか。別に免許のある正規の医者という設定でも、ストーリーは幾らでも作れたはずです。これこそ、最も重要なテーマなんだと思ってます。医者が病気を治すという、そういう単純なストーリーではないという事です。
そして色々な事を考えてしまう。登場キャラクターは手塚ワールド、微笑ましく可愛らしい。しかし、そのバックにあるテーマが分かった時、背筋がゾッとする。
私も母と、約1年間の闘病生活を経験した。
手遅れで余命を考える必要があった。助からない事を、母自身も理解していた。そんな中での、1年間を経験した。
最後は人工呼吸器の有無を、私が決断する必要までになった。母の生死を、私が決めろというのだ。
この「ブラックジャック」は、本当に色々と考えさせられる。
医者と患者本人の間には、例え息子の私でさえ入れない聖域を感じた。結局、どんなに家族が苦しんでも、病気の事は患者本人にしか分からない。そして、ただ病気を治すだけの職人ではない、一人の人間として医者が存在できるのか、患者は最後にそれを願っている。
「ブラックジャック」は、その答えを追い求めている。医者は病気を治すだけが仕事なのかと。

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