モジュラーシンセ考察 05

モジュラーシンセ考察

モジュラーシンセ考察。

そういえばtwitterで、とある方が呟いていた、私がモジュラーシンセを使わない理由的な事。
良い指摘もあって、私なりに考えてみた。

1.まず構成考えるのが面倒
まあ。確かに。
その1台で完結してて、その1台の奏者である人なら、それほど問題にはならない事ですよね。
ピアニストが88鍵盤の1鍵1鍵、それぞれをどのメーカーのにしようか、なんてまず考えないでしょう(笑)

シンセに限っていえば、ソフトウェア1本のみ、ハードウェア1台のみ、これだけで完結してる人は、ほぼゼロだと思うわけです。ソフトウェアもハードウェアも何種類と使い分けるでしょうし、そこにエフェクターも加わるでしょう。
それらの組み合わせは、ここでいうモジュラーシンセの構成を考える事と同じだと思っています。

なので、これは特にモジュラーシンセ固有の話ではないと感じています。

が。
ここでいう「構成」とは、そういう意味で仰られているのではないでしょう。
モジュラーシンセの中身、つまり「モジュール」の組み合わせ、という事だと思います。
この「モジュールの組み合わせ」という視点でいくと、確かに問題があると思ってます。

個人的には、モジュラーシンセはセットで買うのではなく、全てバラで揃えて行くべき、というのが私の考えですが、これでは、この問題は解決出来ないわけですね。

もし、私が全くモジュラーシンセの知識を持ち合わせて無く、それでも欲しくて楽器屋さんに訪れて、漠然と「モジュラーシンセ欲しいんですけど」と、店員さんに言った場合を考えます。
店員さんは、どういう対応をとるでしょうか。
逆に、今の私の知識と経験で、私自身が店員さんだったとして、このような状況になった時は、どうするのかな、と。

・お持ちの機材(特にシンセ類)を訪ねる
・どんな音楽やっているか(好きか)訪ねる
・目的を訪ねる (ライブをしたいとか曲作りに使いたいとか等)
・予算を訪ねる

そうして、お客さんの予算内で、目的に一番近い構成を幾つか考える。

と同時に、そのような目的別、予算別の構成を予め幾つかパターン化して用意しておいて、いつでも提示出来るようにしておく。
リアルに不特定多数のメーカーのモジュールを在庫するなんて非現実的ですから、そういう事を情報として引き出しを頭の中に用意しておくというか。

みたいな事が考えられると思うのですが、結局のところ、「情報」が無いという事なんだと思うんですね。
相談出来ないしアドバイスもらえない、という。

そこなんだと思うんですよね。
モジュラーシンセの使い方云々以前の話なんだ、という。

2.揃えるのに総額が高価
若干、1とも関連がある話ではあると思います。
ライブでモジュラーシンセをどーんって置いて、無数のパッチケーーブルどりゃーって見せてライブする。
それはそれで良いんですけど、結果的に「これだけのモノを揃えないとモジュラーシンセ出来ないのか」、みたいな誤解をね、与えてしまったところがあるよね、、、っていう。

既に音楽やっていて何かしら楽器されている方なら、モジュラーシンセで「シンセ」を構築する必要もないわけですよ。
フィルターのモジュール1つ買って来て、今まで使って来た楽器の音をフィルターに通せば、それだけでも面白いわけです。
別に最初から、あれもこれも、という必要性なんて全く無いんです。

そういう意味で、「セットで買うのはお薦めしない」と私は言ってるんですね。
まぁ、最初からセット買える予算があるんでしたら、それにこした事は無いんですけども(笑)
少なくとも、私は最初から10万超えるような金額で、モジュラーシンセ買える状況では無かったので、コツコツと10年以上掛けて買い足して来たので。

1ともリンクする話で、これぐらいの予算で、こんな使い方どうですか。これなら、つぎに買い足す時に、これを追加すると、もっと面白いかもしれませんね。

そんな選択肢が目に見えれば良いんだろうと。

リアルにお金の話をするとですね。
そもそも「楽器」なんて高いもんですよ。その中でも、モジュラーシンセを含めた「シンセ」なんて、べらぼーに安い部類です。
真っ当にピアノ習ってる人に、年間ピアノに幾らお金掛けてますか、って聞いてみると、シンセというテクノロジーのおかげで、どんだけ安く音楽出来てるか、わかると思います(笑)

と。
半分冗談はさておき。

あなたの機材部屋を見渡してみて下さい。
そこに転がってる、1,2万程度の機材。そういうものが幾つか存在していたら、その機材達を買う資金で、普通にモジュラーシンセも買えます。
機材にかけてる金額なんて、モジュラーシンセとそれ以外で、そんなかわりません。

どっちを買うか、だけの問題なのです。

3.揃えてもだいたいモノフォニック
モジュラーシンセに対する妄想とか迷信の中でも、これ一番有名ですよね。
そもそも、モジュラーシンセがモノフォニック(単音しか出せない、コードが出せない)という迷信は、何処から来たのだろうか。

モジュラーシンセは、〝モノフォニック〟 とも言えますし〝無制限ポリフォニック〟とも言えます。

私のライブでは、モジュラーシンセだけでリズムやベース、シーケンスやパッドのような音等を同時に出しています。果たして、これはモノなのでしょうか、ポリなのでしょうか。

こう考えると、わかりやすいです。

サックス奏者を一人呼んで来て、和音を出してくれと言っても、それは無茶な話です。
サックス1台だけでは、それはモノフォニック。単音しか出せません。
では、どうするか。
簡単な話で、サックス奏者を複数(例えば3人)呼べばいいだけの話です。
3人のサックス奏者に、それぞれド〜とミ〜とソ〜を吹いてもらえば、和音になります。

オーケストラを観ると、ヴァイオリンやトランペット等、必ず複数いるはずです。

モジュラーシンセも全く同じです。
「モノ」しか出ないのであれば、その「モノ」を複数用意すれぱ「ポリ」になります。

使う人が「モノ」で使うか、「ポリ」で使うか。決めれば済む話といえます。

このモノフォニック迷信は、たぶん「鍵盤」に由来するところが大きいのかなと思ってます。
確かに、昔のモジュラーシンセ奏者の中で鍵盤を使っていたりすると、モノフォニックとして使っている場面が多いように思われるからです。
要はソロ演奏として、モジュラーシンセを演奏している。

そもそもシンセサイザーは鍵盤楽器ではありませんから、鍵盤に最適化された楽器じゃないんですね。オルガンやピアノのような長い歴史の中で進化して来た「鍵盤」ではないんです。
シンセにとって鍵盤は、不特定多数のコントローラーの一つでしかありません。

そんなこんなで、モジュラーシンセがモノフォニック、、、単音しか出ない、というのは迷信だと覚えておいて下さいませ。

4.パッチの保存や再現が無理
これは、現実問題としてモジュラーシンセを導入する最も大きな問題の一つだと思います。
この理由だけで、モジュラーシンセを使う価値が無い、と考える人がいても、それは決して間違いではないと思います。

一部分に限っては、モジュラーシンセの信号の流れを保存出来るモジュールも存在はしますが、全体のパッチングや各モジュールのノブ調整した位置情報などをトータル的に保存、リコールは不可能です。

特に仕事でシンセを使っているような方は、修正が入った時にリコール出来ないという状況は、場合に寄っては致命的な事にもなってしまうわけで、この保存と再現が出来ない、という問題は大きいはずです。

が。
例えばコマーシャルの仕事で、とある楽器の生演奏を取り入れたい、となった時。
それに見合う演奏家に来てもらって音入れをすると思うのですが、その後、クライアントの我がままで違うフレーズでも入れたいとなったら、どうするか。
似たような音をシンセで作ったり、ライブラリーからのサンプル等で、誤摩化すってのが現実的な話だと思うのですが、仮に再び演奏家に来てもらって音入れをした場合、前回と同じ音色やテンションで演奏出来るかといえば、それはわかりませんよね。

生身の人間が演奏するわけですから。
その時、その時、という音のはずです。
アコースティックな楽器だと、一定のクオリティが保たれていれば、この違いは良い意味での変化、、、として受け入れられると思うんですね。

実は、そういう意味では、モジュラーシンセってアコースティックな要素も凄くあると思ってるんですよね。

とは言っても、大きな問題であるのは事実です。
その上で、そういう楽器だと認識した上で価値観が持てるのかどうか、というところだと思います。

5.どんなにかっこいいデザインでも結局は機材の上にパスタをぶちまけたみたいな見た目になる
これはねー、同感です。
私は、全くケーブル繋がってない状態の方が、見た目としては好きですね。
見た目なんで、好き嫌いだけの世界なんですけど。

パッチングしてケーブル増えれば増えるほど、ライブ中に「ケーブル邪魔だな」と思いますし(爆)

ただ、パッチングという行為。
両手でケーブル持って、目で見て両手動かして頭で考えて音を耳で聴いて、、、という肉体的な動きが発想の飛躍だったり、それ自体が表現に繋がってると思ってるので、私にとってのモジュラーシンセ最大の魅力は、パッング行為そのものなんですよね。

出て来る音は、そこからの結果なので、実はあまり重要視してないというかw

モジュラーシンセを普及させようなんて思いはないのですが、自分が使ってる楽器なんで理解はして欲しいな、という思いですね。

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