森 博嗣
『スカイ・イクリプス (Sky Eclipse)』
(中公文庫)
元々は、押井守監督の『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』を観ていて、原作は小説と知っていたものの、それ以上アレコレと調べたりもしなかったのですが、妙に〝引っ掛かって〟いた作品だったので、「そういえば」と思い出して、今更なんですが原作の小説を読んでみようかなと思った次第。
発刊順ではなく、時系列順に読み進めています。
時系列からスピンアウトした短編集『スカイ・イクリプス』を読み終えました。
以下、ネタバレもあるかと思いますので、まだ読まれた事が無い方は、このへんで(笑)

『スカイ・イクリプス』は。全8篇からなる短編集で、本篇からのちょっとした裏話や謎解きのような、本篇5冊を読み終えてからの〝その前〟や〝その後〟、そして〝その裏と狭間〟が描かれている感じかなと思います。
読みやすくて終われる話もあれば、「ん?、どういう事?」っていう話もあって、ある意味で混沌とした短編集。
シリーズ最後に出た短編集という事もあって、外伝的なイメージがあったんですけど、実際には本篇の謎や隙間を埋めるように、巧みに配置された8本の話になっていて、本篇の中で記憶に残っていたり何かしら引っ掛かっている部分のピースに合う場面の話だと、「すると、、、と言う事は、、、」みたいな展開を頭の中で広げる事が出来たり、逆にあまり記憶に残ってないと、単なる短編の物語になってしまった感じです。
草薙水素がバリバリのエースパイロット時代の話は、本篇以前の話のような感じなので、純粋な草薙水素ファンには楽しく読めますし、ティーチャがお父さん頑張ってる話は、「あぁ、という事は、この子供は、、、」って感じになるし、、海上に不時着したパイロットの話は最後まで謎で煙に撒かれる感じで、神の出現を待ち続ける老人の話も謎で、誰が誰で誰だろう、みたいな感じになって来て、情報部のカイと草薙水素の関係性を知る事が出来る話とか、フーコのその後の話とか、ミズキ(草薙水素の妹、草薙瑞季)に絡んだ話なんて特に、「ええっ?」って感じで、最大の謎でもある函南優一(カンナミ・ユーヒチ)に繋がったりもするし、最後は草薙水素とフーコ、実は仲が良いじゃん(意訳)みたいな話で終わるし、なかなか短編ながらボリュームあって読み応えもありました。
原作を全て読み終えて、改めて映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』での、草薙水素とカンナミの関係性を考えると、全然違った印象になって来ますね。
延々と繰り返される流れの中で、微々たる何かが確かに変わって、そして積み重なって大きな変化になっていく。
その微々たる変化を、この本篇と短編集が語っているのだと思います。
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