草間彌生「永遠の永遠の永遠」に行って来ました

2012年4月8日(日)まで、大阪国立国際美術館で、草間彌生展「永遠の永遠の永遠」が開催されています。
事前に前売り券を買っていたのですが、その前売り券の値段が、930(クサマ)円。

これは、期待せずにはいられません(笑)

草間彌生、というと、あの原色系水玉模様が強烈な個性を放つ、日本人現代アートの先駆者的存在というか、とにかく一度観たら脳裏に焼き付いてしまうインパクトがあって、、、という印象しかなく、ちゃんと作品を観た事がありませんでした。

で、彼女の作品群が大阪で観れるとなると、これは行かなくては、と。

国立国際美術館に到着すると、早速、赤白の水玉模様のポップ感あるオブジェクトが私達を迎えてくれる。
中に入り、最初の「導入部」の部屋に入った瞬間、頭がクラクラする。

真っ赤な空間に、白色の水玉模様が点在する、ただそれだけの空間。

いきなり、これかっ!!
身構える(笑)
きっときっと、心しておかないと、全エネルギーを水玉に吸い取られてしまうに違いない。

そして、「愛はとこしえ」の空間へ。
そこは、モノトーンで描かれた作品群が展示されていた。
カンヴァス全体に、これでもかと言わんばかりの線が描かれ、目玉が描かれ、横顔が描かれている。
そして、その隙間に無数の、まるで生き物のかのような、水玉(点)が埋め尽くされている。

どの作品を観ても、徹底的に線と目玉と横顔と水玉。

なんなんだろう。
この執着心は。
作品単体の持つパワーというよりも、その作品群から感じ取れる執念に似た執着心のように感じるパワーに圧倒され続けました。

これら、ほとんど下書きってしてないんだろうな。

「わが永遠の魂」の空間へ。
一転してカラフルな色合いの作品群。
しかし、やはりそこに描かれているのは、線、目玉、横顔、水玉。

えげつないパワーだな。。。

この時点で、描かれている作品そのものではなく、違う部分でフトした疑問が浮かんでいました。
それは、カンヴァスのサイズです。
大半が正方形、または、ほぼ正方形のサイズに描かれているんです。

はて?、と。

みなさんご存知のように、A判とかB判とか、こういうカンヴァスもそうですけど、所謂「黄金分割」の比率に合わせたサイズがオーソドックスだと思うんですね。
もちろん、意図してそのサイズから離れたり、そういう事も多々あるわけですけど。

で、どうして正方形のカンヴァスばかりなんだろう、と。

観ているうちに、どことなく不安定な気持ちになってきたんですよ。
正方形なら、本来、安定してそうなものなのですが、やはり安定という意味では、黄金分割に習ったサイズの方が、自然と受け入れられる、というか。

で、きっと、、、そういう不安定さとか、そんな事を狙ってるのかな、なんて想像していたりしました。

「チューリップに愛をこめて、永遠に祈る」の空間。
また、クラクラする。
今度は、真っ白い空間に深紅の水玉模様が散りばめてあり、その中に3体の水玉模様のチューリップのオブジェが展示されている。
でも、これ、凄く面白いと思った。
もっともっと、体育館のような空間で水玉模様で遠近感を無くした世界を創ったら、凄く面白いだろうな、と。
かなり気持ち悪いと思うけど(爆)

ちょっと薄暗い部屋になり、「新作ポートレート」と「魂の灯」へ。
新作ポートレートは、自画像らしい。
これが、凄く威圧感あるんだけど。どこなくポップでもあるんです。
不思議なバランスだなぁ、と。
「魂の灯」は、小さな空間に入って体験する世界。ここは少し並びました。
案内された部屋に入ると、天地左右全て鏡に覆われた部屋で、そこに七色に変わるLED電球が無数に飾られている。
天地左右の合わせ鏡になる事で、無限の広がりを持つ空間が生まれ、遥か彼方まで電球の光が輝いている。
こりゃ、異次元体験。
ちなみに、当初は下に水面を造っていたらしいのですが、どうもトラブルが多発したようで、今は水は使ってないとの事でした(笑)

あ、でも、この技法。
スーパーマーケットとか行くと、野菜売り場とか鏡を置いて奥行きを出す効果に使ってますよね(笑)
それを逆手に取って芸術してしまった作品ですよね。

そして、「映像」コーナーへ。
ここで、草間彌生のドキュメント作品が上映されていました。
インタビューや創作現場とか。

創作現場の、とあるシーンを観た時です。
草間彌生が、出来上がった作品をアシスタントに立ててもらい、、、「ちょっと横にしてみて」とか「縦にしてみて」とか言うシーンがあったんです。

それを観て、衝撃を受けました。

私、カンヴァスのサイズがどうして正方形なのだろう、と疑問でした。
何か、狙ってる事があるのかな、と想像していた。

でも、このシーンを観て、そんな次元じゃないんだな、と。

草間彌生にとって、カンヴァスの天地左右なんて、全く関係ないんだ、と。

普通、作品を描く前に、どっちが上でどっちが下か、決めるでしょう?
そうしないと、描くとっかかりすら掴めない場合だってあるでしょう?

自分も昔、グラフィックデザインの勉強していた時期があって、A全とかにポスターを描いた事もありました。
白いカンヴァスほど怖いものないですよ(笑)
天地ぐらい決めてから筆を入れますよ、天地が無い白いカンヴァスなんて地獄です(爆)

それが、草間彌生には無いんですよ。

作品が描き終わって、それを展示するには、どっちかの辺を上にする必要性が出て来る。
だから、その時に、どっちを上にするか、決める。

作品を描いている段階では、どっちが上か下かなんて、そんな事を問題になんか全くしてない、と。

なんだかもう、自分の疑問が一気に晴れた瞬間、ちょっと体が震えました。

ホントに、この人、凄い、と。

最後にお約束のグッズコーナー。
妻は、メモ用紙やら、家に飾るといって絵も購入していた。

いや、その、、、それ、家に飾るの?(爆)
良い額縁屋さんも見つけているらしいので、この絵に合った額縁も造ってもらうらしい。

帰りに、久しぶりにBIG ISSUEを買った。
販売員の方が手にしていたのは、最新号ではなくバックナンバー。
なんと表紙が草間彌生、この展覧会に合わせてバックナンバー揃えてくるなんて、この販売員の方、やりますね。
最近、BIG ISSUEはご無沙汰だったので、草間彌生が表紙&インタビュー記事があったなんて知らなかった。

このBIG ISSUE記事の中のインタビューで。

「(若い頃)ピカソでもマチスでも何でもこい。水玉一つで立ち向かってやる」

いやー、この台詞イイネ!!
最高だ!!

今回の草間彌生展を観に行って凄く感じたのが、自分がこれだと見つけた事に、ブレずに生涯を掛けて取り組んでる姿。
自分も趣味とはいえ、テクノが好きでシンセサイザーが好きで、曲を創ったりライブをさせてもらったりしてる。

ブレずに、やり続けてるのかな、と。

テクノって音楽は、音楽的歴史や背景からも自由だし、技術的な部分からも自由。
人の頭の中で浮かぶ音とダイレクトに繋がっているのが、テクノ。

なのに、ジャンルがどう、とか。細分化されて、どうだこうだ、とか。
このジャンルには定番のシンセがあって、定番の音がね、、、とか。

なんだよ、それ、と。
バカバカしい。

私、曲を創っても、自分で嫌悪感だらけのものしか創れなくなって、人に頼まれたり、何かしら外圧的理由が無いと、全く曲が創れなくなったんです。
パソコンの使い方を知ってるから、とか。
音楽ソフトウェアの使い方を知ってるから、とか。
シンセサイザーの使い方を知ってるから、とか。
誰かのマネをしてるから、とか。
結局、そんな理由と範囲の中でしか、曲を創ってなかったんです。
その事に気づいた瞬間、自分の創った曲の全てが嫌いになったんです。

そもそも、自分の心と体にしみついてる「音」って、何処にも無いじゃん、と。

使い方なんて説明書読めば、誰だって使える範囲です。
その程度で、曲を創ってたんです。

元々からある、あるかもしれない、自分の「音」ってなんなんだろう。
その答えが、モジュラーシンセサイザーを使ったライブを、この5年ほど続けて来た中で、なんとなく感じて来れたんです。

草間彌生の作品群を観てて、やっぱり、続けないと駄目だなって凄く思って。
このモジュラーシンセサイザーを使った表現っていうのかな、自分でもまだ何も見えてないけど。続けないと見えて来ないだろうし。
10年後も20年後も、今と全く同じモジュラーシンセサイザー使って、今と同じ音を奏でていたいな、と。

その時、10年前や20年前と違う「何か」が自分の中で生まれていたら、きっとそれは自分の「音」なんだろうな、と。
自分にとっての独創性を探すなんて、苦悩以外のなにものでもないんだけど。

うん、エネルギー吸い取られるかと思ったけど、許容オーバーなエネルギー貰った(笑)
大阪は4月8日まで。
まだの方は、ぜひ。

その後は、、、
埼玉県立近代美術館
2012年4月14日(土)~5月20日(日)
松本市美術館
2012年7月14日(土)~11月4日(日)
新潟市美術館
2012年11月10日(土)~12月24日(月・祝)

、、、という開催予定らしいです。
お近くの方も、ぜひ。

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