モーリス・ルブラン
『カリオストロ伯爵夫人』
(早川書房)
ずいぶん昔、Palm OS端末機を使っていた頃、電子書籍としてモーリス・ルブランのルパンシリーズは何作か読んでいたのですが、前々からまた読みたいなと思いつつも、なかなか書店で見掛ける事がない中、たまたま復刻されているシリーズの中から『カリオストロ伯爵夫人』を見つけたので買ってみました。
宮崎駿監督の長編監督デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』のモチーフにもなっている作品ですね、もちろんクラリスも登場します。
ルパンシリーズは過去に何冊か読んでいるわけですが、もう20年ぐらい前の話ですし、作品を単発で読んでいる感じなので、それ以上は詳しく調べたりもしていないので、今となっては何も覚えていないって感じです。
そんな中、書店で『カリオストロ伯爵夫人』を見付けて、有名な作品ではあるけど、これは読んだ記憶が無いなと、そうなれば買うしかないです。
ルパンシリーズとしては後発の作品なんですが、ストーリーの設定としては、まだ〝アルセーヌ・ルパン〟を名のる前の若きルパンことラウール・ダンドレジーと、恋人クラリス・デティーグ(最後には結婚して子供が産まれていたのは全く知らなかった。。。)、そしてラウールの宿敵となるカリオストロ伯爵夫人ことジョゼフィーヌ・バルサモを中心にして、隠された財宝を巡る冒険劇。

ルパンことラウールは、底知れぬ謎めいた美女ジョゼフィーヌ・バルサモと出会う事で心を奪われて、恋人であるクラリスからジョゼフィーヌへ夢中になる中、秘密の財宝を探しているジョゼフィーヌの手助けをしようと動き始めるのですが、実はジョゼフィーヌも相当の悪党であり、殺人も厭わない考え方にラウールの心は冷め始め、自分も上手く利用されていた事に気付く。
逆にジョゼフィーヌは、利用価値のあるラウールではあったけど、その明瞭な頭脳や誰にも媚びない自信家であるラウールを本気で愛してしまう。
ラウールはクラリスのもとへ戻る決意をし、秘密の財宝の謎も解いてしまうが、ジョゼフィーヌに財宝の大半を奪われてしまう。
そして、クラリスを選んだジョゼフィーヌは、ラウールへの憎しみと復讐を誓う。
ラウールとクラリスは結婚をして子供が生まれますが、産後の肥立ちが悪くクラリスは亡くなってしまいます。更に追い打ちをかけるように、残された息子が拐われて行方知れずにもなってしまう。
息子の誘拐はジョゼフィーヌの復讐なのか?
クラリスと結婚してからも、裏稼業としての泥棒は続けていたようで、その事はクラリスに知られないようにしていたようなので、妻であるクラリスや息子には真っ当な人生を歩んで欲しいと思っていたのかも知れない。
「え、結婚してて子供がいたんだ」って最後になって、そんな幸せが崩れ去る事になって話が終わる。
主人公ラウールは、どれだけ打ち拉がれたんでしょう。。。
この後、ラウールは怪盗アルセーヌ・ルパンとして活躍していく事になるわけです。
一時は相思相愛とも言える関係だったジョゼフィーヌも、最後はクラリスの命も狙うラウールの宿敵となるわけですが、でもなんか、可哀想な印象が残るんですよね。
ラウールもジョゼフィーヌも、根っからの盗賊だと思うんですよ。それだけに最後は宿敵・ライバルにならざるを得ない関係性だったのかも。
時にはラウール(ルバン)を愛し、時にはラウールを裏切る、、、って。
これって、ルパン三世の峰不二子ですよねえ、ジョゼフィーヌって。
(実際のモチーフは違うみたいですが)
誰もが知る漫画、そしてTVアニメ『ルパン三世』の源流である、モーリス・ルブランのルパンシリーズ。
機会があれば、読んでみてはどうでしょうか。
これに続いて、復刻されている『奇巌城』も読みたいな。これは過去に一度は読んでいる。
あと、復刻されているようですが、なかなか在庫が見当たらない『813』が一番好きなので、こちらも見付けたら読みたいな。
P.S.
平岡敦さんの日本語訳は悪くは無いのですが、原書が100年前のフランス語の小説である事と、その時代の貴族文化というか社会風俗が初期設定で「それぐらい知ってるよね」という前提で物語が始まるので、導入部分からちょっと、とっつき難いというか。
日本語訳も、何処まで現代風に崩して良いのか、という難しいバランスはあったと思うんですよね。読みやすさを優先させてしまうと、100年前のルブランが書いた空気感は無くなってしまうわけですから。
なので、面白いんですけど、ストーリーに入り込める部分と、とっつき難い部分が、まだらになってる感じで読み進めていました。
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