上村裕香『救われてんじゃねえよ』

4.0
Book

上村裕香
救われてんじゃねえよ
(新潮社)

新刊で何かないかな、と本屋をフラフラしていたら、フト目に止まった本書。

表紙に惹かれて帯の「最も殺傷力の高い文章」という殺し文句にも興味が湧いて購入してみたら、確かになかなかの殺傷力で面白かった。

上村裕香『救われてんじゃねえよ』特設サイト
(第一篇が読めます!!)

もちろん、何処かで誰かが推薦したり紹介していて知ってた、というわけでもなく、何一つ事前情報も無い状態で購入して読み始めたわけですが、文章は軽快ながらも、いきなり内容がヘビーというか、そういう重い話がテーマなのか、と読み進めると、とたんに腹立たしい気持ちにもなったりして、それはある種の主人公への同情と言えるのか、または社会制度への憤りなのか、という感情だと自分で理解しようとしていたら、そんな事はなかった。

主人公は、その更に上を飛び越えていった。

この両親にして、この子あり、とも言うべきか。

もし自分が主人公と同じような立場になってしまった時、何かと気に掛けてくれる大人達は本当に意味のある存在なのだろうか。〝気に掛ける事〟が根本的な問題の解決に、何の役に立つのだろうか。
それよりも、そんな境遇を気にして顔色を窺われるよりも、自分自身の事だけを見て対応してくれる大人達の方が、よほど前向きに物事を考えられるようになるんじゃないだろうか。

後者は、一つ間違えば〝冷たい人間〟と見てしまう人もいるかもしれない。
それでも救われる人はいる、主人公のように。

読み終わって、負の気持ちが残りつつも、主人公には「私の人生に文句あるんか」とカウンターで殴り飛ばされるぐらいの爽快感も残る、ちょっと不思議で面白い作品でした。

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